Ⅳ. 濃厚流動食使用時の合併症とその管理
  • 1. 流動食と下痢
  •  ・流動食自体の刺激性や消化されない流動食が大腸に達するために高浸透圧性の下痢が発生します。経腸栄養開始直後は下痢を起こしやすいため、下痢を理由で中止しないために十分その原因を検討する必要があります。

    ○流動食による下痢の原因
    ①投与方法・投与速度
     ・貯留能を有する胃からの投与であれば、十分経腸栄養に順応した症例の場合、一気に投与(ボーラス投与)しても下痢はしないことがあります。しかし、一般的には下痢をしやすいので、大量のボーラス投与は基本的には行わないようにしましょう。
     ・投与速度としては、症例にもよりますが、最大でも300mL/時程度までとします。投与速度が速いとその分早く胃から排出され、下痢が誘発されます。
     ・胃から排出されれば小腸を容易に下方へ流れていき、下痢の要因となります。下痢を発生しない適切な投与速度を選択するようにします。
     ・できれば、注入ポンプを使用し20~ 30mL/時から開始します。24時間持続投与を行い、少量持続投与にすることで下痢が回避されます。目標の1日投与量は高く設定せず、時間投与量を漸増しながら1週間くらいで到達可能な量とします。
     ・下痢をきたした場合は、他の要因の有無を検討して、問題がなければ前の日の投与速度・量まで減らして投与を試みます。

    ② 投与される消化管の位置(カテーテルの先端の位置)
     ・カテーテル先端位置により投与速度の耐用性が異なります。
     ・胃:胃は貯留能があるため、流動食を短時間に投与しても下痢を起こしにくいと考えられます。しかし、流動食が胃で保持されにくく、胃から排出された後には腸管を急速に通過し、下痢を起こすことがあります。とくに胃切除後(幽門形成例を含む)では、幽門の調節機構がないため、その傾向は高くなります。
     ・小腸:小腸では胃のような貯留能はないため、一気に投与されると内圧が急に上昇し危険です。投与された流動食が上方へ逆流するか、下方へどんどん流れて下痢をきたすことがあります。投与速度を控えて下痢の発生を予防します。管理できる投与速度に達するまではポンプを使用して、少ない量から徐々に慣らしながら増量してゆく必要があります。

    ③ 高浸透圧
     ・消化態栄養剤(成分栄養剤、ペプチド流動食)では、それぞれの分子が小さく、浸透圧(成分栄養剤で
  • 約730mOsm/L)が高くなります。半消化態流動食はほぼ等張ですが、1.5倍の高カロリータイプも存在します。高浸透圧のものは、希釈することで浸透圧を下げることができますが、薄める場合には感染の危険があるので注意しましょう。

    ④ 温度
     ・冷たい流動食の投与は、下痢発生の原因になります。冷所で保存する場合には室温に必ず戻してから投与しましょう。ただし、体温程度にまで加温する必要はありません。加温しても、 ラインを滴下する投与の間に室温まで低下してしまうので無駄であり、また、加熱し過ぎると蛋白変性を起こしやすくなります。

    ⑤ 乳糖不耐
     ・乳糖に対して吸収不良を呈する患者がいます。乳糖不耐症は日本人には多い傾向があります。既往に牛乳などの乳製品でおなかがゴロゴロする、下痢を起こすなどがあれば、乳糖不耐症を疑います。乳糖を含まない製品へ変更する必要があります。

    ⑥ 低残渣
     ・残渣は腸内細菌の栄養源となっており、低残渣の流動食ではこれらの細菌が減少して腸内環境が変化し、下痢を発生することがあります。食物繊維やオリゴ糖などを投与するか、それらが強化された流動食を投与します。

    ⑦ 吸収不良
     ・下痢の原因には脂肪の吸収障害も多くみられます。脂肪を含む流動食を投与すると吸収できない部分は大腸へ移動し、下痢を発生させ、さらにすべての栄養素吸収不良に陥ります。膵外分泌機能が膵切除や慢性炎症により低下して発生することもあります。
     ・下痢自体は、脂肪の含有割合の低い製品へ変えることにより改善が期待できます。糖質やアミノ酸(ペプチド)などを中心に投与し、脂肪を少ない比率とします。ただし、長期間の脂肪制限は、脂肪自体や脂溶性ビタミンは欠乏症予防のため静脈的に投与しなければなりません。
     ・まれに、吸収不良症候群や蛋白漏出性胃腸症がみられます。吸収の機能を確認する必要があります。

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